寄付者インタビュー
青山学院大学 体育会 硬式野球部ご出身で、現在は千葉ロッテマリーンズの監督として選手を率いる井口資仁監督にお話しを伺いました。
在学中にオリンピックで銀メダルを獲得、その後もプロ野球、メジャーリーグと厳しい環境で切磋琢磨された井口監督に聞く青学時代の思い出、コロナ禍での生き方とはー
野球を通じて、多くの人へ勇気、希望を届けたい
-2020 年 9 月、新型コロナウイルスの影響でキャンパスに来ることが出来ていなかった青山学院大学新入生向けのイベント「ウェルカムデー」へのビデオメッセージにご協力いただいた想いをお聞かせください。
入学式、卒業式、成人式など昨年は色々な人生の区切りとなるイベントがコロナ禍の影響で中止となり、夢見ていた本来あるべきキャンパスライフもなかなか実現できていないと思います。そういった皆様の気持ちを少しでも理解して、先輩としてなにかサポートできないか、メッセージを伝えられることが出来ないかと想い参加をさせていただきました。
-球団や選手会で、新型コロナウイルスに係る医療応援の寄付や医療資材提供、災害被災地支援のために募金活動・義援金支援を行っている様子をニュースなどで拝見しております。積極的に社会貢献をされている想いや、きっかけなどを教えてください。
入団した頃から車いすの寄付など様々な活動をさせていただいています。プロ野球は多くの人に応援していただいているわけですから、なにか社会に貢献して返せることはないのだろうかと考えていた中でそのような活動になりました。プロ野球選手として結果を出してファンの皆様の期待に応えてオフは積極的に社会活動をする。地域に恩返しをするという活動は当然だと思います。こういった活動もスポーツ界で今ようやく身近になり浸透してきていることを嬉しく思います。
-新型コロナウイルスの流行によりプロ野球も開幕の遅れや無観客での試合など、今まで想像しなかったような影響を受けられたと思います。選手を率いる監督という立場として、 前代未聞の状況の中どのように自分自身や選手達を鼓舞されていましたか?
まずはこのようなコロナ禍の状況の中でプロ野球が開催できることに感謝し、最前線で戦ってくれている医療従事者の皆様に感謝の気持ちを持ちながら、球場で野球観戦が出来ずにテレビで応援してくれているファンに想いが届くようなプレーをしようという話をしました。我々、プロ野球は幸い、世の中に発信する力があります。我々が全力プレーをしてしっかりとした行動をとり社会にメッセージを発信する。私たちのプレーがファンの皆様にとって勇気、希望、夢となる。それをもっと意識してやっていこうと話をしました。頑張っている姿をみてもらいたい。その想いでした。
青学野球部で"戦国東都"を戦い抜いたからこそ叶った夢
-高校卒業後にプロ入りするという選択肢もあったかと思いますが、青山学院大学へ進学されました。青学へ進学したことで良かったこと、また青学の魅力や好きなところはどんなところでしょうか。
大学でもさらに野球を極めたいという想いがあり青学を選ばせていただきました。当時、野球部は本当に強く東都リーグは"戦国東都"と呼ばれ、非常にレベルが高く自分を磨くのにピッタリだと思いました。また野球は1996年アトランタオリンピックまではアマチュア選手以外の出場が認められていなかったのでオリンピックに出場したいという夢を、青学野球部でなら叶えられるのではと思っていました。
-学生時代の印象的なエピソード、出会いや様々なご経験を通してプロ野球選手になって活かされているご経験はありますか?
全日本大学野球選手権大会優勝も出来ましたし、アトランタオリンピックで銀メダルを獲得することも出来ました。オリンピックに出ることは一つの大きな目標でしたので本当に嬉しかったです。青学を選択し、青学で野球が出来たからこそ、夢が叶ったのだと思っています。当時のチームメートとは今でも交流が深いです。同じ年にプロ野球に4人がドラフト指名されました。そのうち3人がドラフト1位です。そして今も4人とも指導者の立場でプロ野球にいます。ライバルとしてお互い意識をしながら成長をすることが出来ました。そういう人が近くにいた事で成長が出来たのだと思っています。
1996年のドラフトで指名された4名は今も指導者として活躍中です。
(左から 倉野 信次 福岡ソフトバンクホークスコーチ、井口監督、清水 将海 千葉ロッテマリーンズコーチ、澤﨑 俊和 広島東洋カープコーチ)
-2019年には青学の先輩でもある小久保裕紀氏とともに相模原キャンパス内ベースボールスタジアムの 「2000 安打達成記念プレート 除幕式」に出席いただきました。並んだプレートをご覧になっていかがでしたか?
憧れの大先輩と一緒にプレートを設置いただき光栄でした。小久保さんとは大学時代とプロ野球で同じチームでプレーをさせていただきました。一緒に内野を守り、先輩の背中を見ながら頑張ってきました。結果的に2000本安打を達成し、小久保さんとともにこのような記念プレートを設置いただき、本当に嬉しいです。後輩がこのプレートをみて次はオレだ!と頑張ってほしいです。
井口監督と小久保裕紀氏の2000本安打を記念したプレート除幕式の様子。(2019年12月6日)
スピーチの中で後輩たちに送られた「何とか(東都リーグ)1部に上がってほしい。早く1部でのプレーを見たい。」という言葉は2021年春、実現されます!
壁を乗り越えた先には新たな世界が─
-オリンピックメダリスト、メジャーリーガー、監督と、華麗なる経歴でいらっしゃいますが、選手時代・監督時代を通じ、困難だったことを克服された経験を教えてください。
困難な事、壁は誰にだって必ずあります。大事なのはどうやって乗り越えるか。一番大事なのは困難な出来事が立ちはだかった時に、乗り越えようと色々と模索したり努力することだと思っています。高い壁は一回で乗り越えようとは思わずに、階段だと思って一段ずつ上がっていけば、必ず乗り越えられると思います。プロ入り後、壁にぶつかることが多々ありましたが、しっかりと自己分析をして明確な目標設定をすることで、一つ一つ乗り越えてきたと思います。
-チームを日本一に導くため、選手その他関係者へ監督(リーダー)としてマネジメント上、何を一番大切にされていますか?
選手、コーチ、スタッフをどうやって一つの方向へと導けるか。チームとして目標設定をして方向性を共有するためにはコミュニケーションをしっかりとることが大切だと思います。プロ野球は一人がレギュラーになったら、一人、試合に出られなくなるシビアな世界で、一つになるのはなかなか難しいです。そのためにも役割分担をしっかりとして、その役割を理解してもらい、今後の方向性、考え方を伝えています。もちろん指導者であるコーチとのコミュニケーションも大事になります。みんなが同じ考えを共有していないと選手たちが困る。コーチのマネジメントも大事にしています。
左 青学生時代に日本代表としてアトランタ五輪へ。中央 1996年秋の大会。在学中4年生からはキャプテンとしてチームを牽引されました。
右 様々な経験を経て今は指導者としてグラウンドに立っています。
-新型コロナウイルスの流行から1年あまりが過ぎました。野球部の東都リーグ 1 部昇格など 、限られた環境下でも頑張っている学生の嬉しいニュースが聞こえてくる一方で、制限された生活でつらい状況が続く学生たちもいます。最後に、コロナ禍ではありますが、在学中にやるべきこと、大切にすることなどを含め、青山学院の在校生を力づける応援メッセージをお願いいたします。
昨年は今まで当たり前と思っていたことが当たり前ではないと気付かされた年でした。この気付きはこれから生きていく上で大事にして欲しいと思います。出来ないと思っていることが別の方法で出来ないかと考えさせられている時期でもあると思いますが、今までにない経験をしたと前向きに捉えて欲しいと思います。TV会議などの新しい生活様式、仕事のスタイルが確立されつつあります。今後のターニングポイントに生きていることを実感し色々な事にチャレンジしてください。コロナ禍だからできないと諦めるのではなく、この状況下でどのように作り上げるか、新しいものを生み出せるかと若い皆さんが考えてよりよい社会作りをして欲しいと思います。将来、こういう事もあったよねと振り返る時は必ず来ます。そんな時、誰もが去年と今年は大きなターニングポイントとして振り返る事になると思います。色々と考えることが多かった日々。考えた事、気付いたことを将来の糧にしてください。
寄付者の方を対象とした 井口監督 監督就任記念「応援・野球観戦ツアー」(2018 年6月)
井口監督 「こうやって今でも青学OBの方に応援していただいていることは大変ありがたいです。
社会に出て、大学のつながりの強さをより感じるようになりました。
自分には応援をしてくださっている頼れるOBが沢山いると思うと勇気が湧きます。今後も青学の看板を背負っているという
プライドを持って後輩、そして全国で活躍されているOBの皆様にいい報告が出来るように精一杯頑張りたいと思います。
千葉ロッテマリーンズの応援宜しくお願いします!」
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